
はじめに
マンションで生活をしていて、突然ガスが止まってしまったという経験はありませんか?
お湯が出ない、コンロの火がつかない、床暖房が消えてしまう。
そんな緊急事態に直面すれば、誰でも焦ってしまうものです。
急いで復旧させようと、玄関の脇にあるメーターボックス(MB)へと向かうはずです。
しかし、そこでさらに予期せぬトラブルがあなたを待ち受けていることがあります。
ガスメーターを操作しようと扉の取っ手を掴んだのに、びくともしないのです。
まるで鍵がかかっているかのように、固く閉ざされたまま動かない。
「なぜ開かないの?」
「管理会社に連絡するべき?」
「それともガス会社?」
「まさか鍵屋を呼ぶ必要があるの?」
頭の中には次々と疑問が浮かび、パニックになってしまうかもしれません。
特に、近年の気密性が高いタワーマンションや、大規模修繕工事を終えたばかりの建物では、ある「特定の現象」が原因で扉が開かなくなるケースが急増しています。
単なる故障だと思い込み、力任せにこじ開けようとするのは非常に危険です。
扉そのものや、取っ手のハンドル部分を破損させてしまう可能性があるからです。
もし共用部分である扉を壊してしまえば、後から高額な修理費用を請求されるリスクさえあります。
この事態を冷静に乗り切るためには、正しい知識が必要です。
この記事では、メーターボックスの扉が開かない原因を、物理的な視点と環境的な視点の両面から徹底的に整理します。
そして、居住者がその場ですぐに試せる安全な対処法と、万が一修理が必要になった場合の責任の所在について、どこよりも詳しく解説します。
扉が開かない原因が、あなたの住む「部屋の性能」によるものなのか。
それとも、「設備の劣化」によるものなのか。
この違いを知ることが、無駄な出費を抑え、一刻も早く平穏な生活を取り戻すための第一歩となります。
どうぞ、焦らずに最後まで読み進めてみてください。
ガスが止まったのに扉が開かない!緊急時の確認ポイントと復帰操作
震度5以上の大きな地震が発生した後や、ガスを長時間使い続けた時。
あるいは、ガスの流量に異常な変化があった時。
ガスメーター(マイコンメーター)に内蔵された安全装置が作動し、自動的にガスの供給を遮断することがあります。
これは私たちの命を守るための大切な機能です。
ガスを再び使えるようにするためには、メーターボックス内にあるガスメーター本体の「復帰操作」が必要不可欠となります。
しかし、その入り口であるメーターボックスの扉が開かなければ、何も手が付けられません。
ガスが使えない不便さと、扉が開かない焦りで、冷静さを失ってしまう場面です。
まずは深呼吸をして、扉が開かない状況下でも、その後の手順をしっかりとイメージしておきましょう。
扉が開いたその瞬間に、迷わずスムーズに行動できるよう、心の準備を整えることが大切です。
プッシュボタン式・つまみ式の開け方と復帰ボタンの位置
ガスメーター(マイコンメーター)にはいくつかの種類があり、扉を開けた後に操作すべき部分が異なります。
多くのマンションで採用されているガスメーターは、復帰ボタンに黒いキャップがついているタイプが一般的です。
しかし、復帰操作を行う前に、必ずやっておかなければならないことがあります。
それは、室内のすべてのガス機器のスイッチをオフにすることです。
キッチンのコンロ、お風呂の給湯器、床暖房など、ガスを使用する機器はすべて停止させてください。
さらに、それぞれの器具栓(元栓)も閉じておく必要があります。
これは、復帰操作時の安全確認において、ガス漏れと誤認されるのを防ぐためです。
もしガス機器がオンのままだと、マイコンが「ガスが漏れている」と判断し、復旧できないことがあります。
準備ができたら、いよいよ扉を開けた後の操作手順です。
具体的な手順は、以下の通りです。
- キャップを外す
まず、ガスメーターの左上あたりを見てください。そこにある黒いキャップを、左に回して外します(キャップがない機種もあります)。 - 復帰ボタンを押す
キャップの下にある復帰ボタンを、奥までしっかりと押し込みます。指でグッと押し込む感触があるはずです。 - 手を離す
ボタンからゆっくりと手を離します。すると、赤ランプが点灯から点滅に変わるのが確認できるはずです。
もし、メーターボックスの扉自体に鍵穴があり、施錠されていて開かない場合。
この場合は、無理に開けようとしてはいけません。
マンションの管理員がマスターキーを持っている可能性が高いです。
まずは管理室へ連絡し、開錠をお願いするのが最優先の行動となります。
また、扉の取っ手(ハンドル)の形状も確認してください。
大きく分けて「プッシュボタン式」と「つまみ式」の2種類があります。
プッシュボタン式は、ハンドルの近くにあるボタンを押すと、取っ手がポンと飛び出す仕組みになっています。
飛び出した取っ手を持って、そのまま手前に引くことで解錠されます。
一方、つまみ式は操作が少し異なります。
取っ手のつまみ部分を起こしてから、回転させる必要があります。
操作方法を間違えていて、「鍵がかかっていて開かない」と勘違いしているケースも意外と多いものです。
今一度、取っ手の仕組みをよく観察してみてください。
復帰操作をしてもガス止の表示が消えない・解決しない場合
無事に扉が開き、復帰ボタンを押すことができた。
しかし、それですぐにガスが使えるようになるわけではありません。
ここからが、マイコンメーターの重要な仕事の時間です。
復帰ボタン操作後、マイコンメーターはガス漏れがないかどうかの安全確認(漏洩検査)を自動的に行います。
この検査には、約3分ほどの時間がかかります。
その間、メーターの赤ランプは点滅を続けます。
この3分間の待機時間は、非常に重要です。
もしこの間に、しびれを切らしてガス機器を使ってしまうとどうなるでしょうか。
マイコンが「ガスが漏れている!」と判断し、再びガスを遮断してしまいます。
ですから、赤ランプが点滅している間は、決してガスを使わずに静かに待っていてください。
3分経過しても赤ランプの点滅が消えず、ガスが使えない場合。
まずは、ガス機器の止め忘れがないか、もう一度家中を確認してください。
給湯器のリモコンがつけっぱなしになっていませんか?
それでも解決しない場合。
あるいは、扉が物理的にどうしても開かず、復帰操作そのものができない場合。
この場合は、迷わずガス事業者へ連絡してください。
電話で状況を伝える際は、具体的にこう伝えるとスムーズです。
「ガスが止まりましたが、メーターボックスの扉が開かないため、復帰操作ができません」
そう伝えれば、検針員や緊急作業員が駆けつけてくれます。
彼らは日々、さまざまなマンションの現場を回っています。
固着してしまった扉を開けるためのノウハウや、専用の工具を持っていることが多いのです。
プロの手を借りることで、安全かつ確実に問題を解決できるでしょう。

なぜ扉が開かない?「負圧」と「物理的劣化」の原因切り分け
メーターボックスの扉が開かない原因は、鍵やハンドルの故障だけではありません。
実は、扉そのものには何の問題もないケースが非常に多いのです。
目に見えない「空気の力」によって、扉が強力に封鎖されてしまっていることがあります。
また、金属特有の「サビ」が進行していたり、メンテナンス時の「塗装」が悪さをしていることもあります。
原因を特定せずに、力任せに対処しようとすると、状況はさらに悪化します。
まずは冷静に、「なぜ開かないのか」を切り分ける視点を持つことが重要です。
換気扇の使用で扉が張り付く「負圧」のメカニズム
近年のマンション、特にタワーマンションや省エネ基準に適合した新しい住宅にお住まいの方は要注意です。
これらのマンションは、気密性が極めて高く設計されています。
隙間風が入らない、断熱性が高い、というのは素晴らしいメリットです。
しかし、この「密閉された空間」こそが、扉が開かなくなる原因を作り出します。
例えば、キッチンのレンジフードなどの強力な換気扇を「強」で作動させたとします。
すると、室内の空気はものすごい勢いで屋外へと排出されていきます。
この時、給気口(レジスター)からの空気の取り込みが追いつかないと、どうなるでしょうか。
室内の空気が薄くなり、気圧が屋外よりも低くなる「負圧」という状態が発生します。
マンションの構造上、メーターボックスと室内は、配管の貫通部などを通じて空気がつながっていることが多くあります。
室内が負圧になると、その吸引力によって、メーターボックス内の空気も室内に引き込まれてしまいます。
その結果、メーターボックスの中も負圧になります。
すると、外側(共用廊下)にある通常の大気圧が、扉を外から内側へと強く押し付けることになるのです。
わずかな気圧差だと思うかもしれません。
しかし、扉の面積全体にかかる力を合計すると、その総荷重は数十キログラムに達することもあります。
大人が力一杯引っ張っても、容易には開けられないほどの力です。
以下のような特徴がある場合は、故障ではなく「負圧」が原因である可能性が高いと言えます。
- 症状のチェックリスト
- 扉が非常に重いが、ガタガタと少しだけ動く「遊び」がある
- 扉の隙間から「ヒュー」という高い風切り音が聞こえる
- キッチンの換気扇や、浴室の24時間換気が強く運転している
- 窓を開けると、嘘のように扉が軽くなる
この現象は、鍵やハンドルの故障と非常に間違われやすいトラブルです。
しかし、空気の流れの仕組みさえ理解していれば、誰でも冷静に対処できるものです。
塗装の癒着やサビ・変形による物理的な固着
負圧のような環境要因ではなく、物理的に扉が枠にくっついてしまっているケースも散見されます。
ひとつ目の大きな原因は、鉄素材特有の「サビ(腐食)」によるものです。
鉄は酸化してサビになると、体積が元の数倍に膨れ上がるという性質を持っています。
もし、扉の蝶番(ヒンジ)の隙間でサビが発生したらどうなるでしょうか。
膨張したサビが隙間を埋め尽くし、強力な圧力で可動部を締め付けてしまいます。
これを「サビ詰まり」と呼びます。
こうなると、扉は完全にロックされたようになり、動きません。
また、扉枠の下部に雨水や結露水が溜まりやすい環境では、枠内部の鉄が腐食し、膨張して枠自体を押し上げることがあります。
その結果、扉と枠が噛み込んでしまい、開かなくなるのです。
ふたつ目の原因は、大規模修繕工事などの直後に多いトラブルです。
それが「塗膜の癒着」です。
マンションの大規模修繕では、鉄部の塗装工事が行われます。
通常、サビ止め、中塗り、上塗りと、3層の塗料を塗り重ねていきます。
しかし、塗料が完全に乾ききる前に扉を閉めてしまうと、どうなるでしょう。
接触面の塗料同士が、まるで接着剤のように強力にくっついてしまいます。
また、塗料を厚く塗りすぎたために、扉と枠の間のわずかな隙間(クリアランス)が埋まってしまうこともあります。
物理的に一体化してしまうのです。
これは、塗装後に隙間にカッターを入れて塗膜を切る「縁切り」という工程が不十分だった場合に起こりやすい施工不良です。
鍵が回らない・壊れた場合に考えられる部品の故障
空気圧の問題でもなく、扉の固着でもない。
純粋に、施錠装置そのものが破損している可能性もゼロではありません。
メーターボックスの扉は、常に共用廊下に面しています。
雨風や砂埃、湿気の影響を直接受け続ける過酷な環境にあります。
長年使用していれば、ハンドル内部のバネ機構が摩耗したり、錆びて折れたりすることは避けられません。
ラッチ(かんぬき)の動きが悪くなり、引っ込んだまま戻らなくなったり、逆に出たまま戻らなくなったりします。
特に築20年を超えたマンションでは、金属疲労による部品の故障率が急激に高まる傾向にあります。
また、鍵穴(シリンダー)に異物が詰まっているケースもあります。
子供が木の枝やガムなどを詰め込んでしまうイタズラも、残念ながら珍しくありません。
あるいは、鍵違い(別の場所の鍵を使っている)の可能性も考慮する必要があります。
鍵が回らない、あるいは鍵が奥まで刺さらないといった症状がある場合。
無理に力を入れて回そうとするのは禁物です。
鍵が折れて鍵穴に残ってしまい、最悪の場合、シリンダーごとドリルで破壊して交換しなければならなくなります。
自分で試せる「開かない扉」の安全な開け方と絶対NGな行為
扉が開かない原因が、ある程度推測できたでしょうか。
次は、実際に扉を開けるための具体的なアクションを起こします。
ただし、ここで絶対に守ってほしいことがあります。
それは、力任せに引っ張ったり、バールのような適当な道具を使ったりしないことです。
共用部分である扉を破損させてしまうと、あなたは被害者ではなく、加害者になってしまう恐れがあります。
後々、高額な弁償費用が発生するリスクを避けるためにも、慎重に行動してください。
ここでは、居住者が安全に試すことができる対処法と、絶対にやってはいけない禁止事項を具体的に解説します。
窓や給気口を全開にして気圧差を解消する
もし、原因が「負圧」であると疑われる場合。
解決策は非常にシンプルで、かつ劇的な効果があります。
室内と屋外の気圧差をなくしてしまえば良いのです。
最も効果的で、即効性がある方法は、「窓を開ける」ことです。
リビングや居室の窓を、一時的に開けてみてください。
窓を開けると、外気が「シュッ」と音を立てて室内に流れ込みます。
これにより、低下していた室内の気圧が一気に回復し、屋外と同じ状態になります。
具体的な手順は以下の通りです。
- 換気扇を止める
まず、室内の換気扇(レンジフードなど)を一時停止します。 - 窓を開ける
リビングや居室の窓、または壁にある給気口を全開にします。 - 待つ
数秒待ちます。空気の移動が落ち着くのを待ちましょう。 - 扉を開ける
メーターボックスの扉を開ける操作を試みます。
この手順を踏むことで、嘘のように扉が軽く開くはずです。
もしこれで解決したなら、修理の必要は一切ありません。
原因は故障ではなく、換気不足による負圧だったことが確定します。
今後は、換気扇を使用する際に必ず給気口を開けるか、窓を少し開けて給気を確保することを習慣にすると良いでしょう。
扉枠を叩いて塗膜の癒着を剥がすテクニック
塗装工事の直後などで、塗料がくっついて扉が開かない場合。
この場合は、振動を与えることで癒着が剥がれることがあります。
ハンドルの近くや、扉の枠周辺を、手のひらで「トントン」と小刻みに叩いてみてください。
ポイントは、優しく、しかし確実に振動を伝えることです。
金槌やハンマーなどの硬いもので直接叩くのは絶対にやめてください。
塗装が割れたり、扉が凹んだりしてしまいます。
必ず素手で行うか、当て布をしてゴムハンマーなどで優しく叩くのがコツです。
また、ハンドルの操作方法にも工夫があります。
ただハンドルを持って「引く」だけでは開きにくい場合があります。
「引く」だけでなく、「押し込む」動作を繰り返してみてください。
グッグッ、と押したり引いたりすることで、癒着している部分に動きが生じます。
うまくいけば、「バリッ」という音とともに塗膜が剥がれ、扉が開くことがあります。
もし、ご家庭にガラス用などの強力な吸盤がある場合。
これを扉の表面に吸着させて、引っ張る補助として使うのも有効な手段です。
ハンドル一点に過度な力がかかるのを防ぎ、面で引っ張ることができるからです。
しかし、これらの方法を試しても開かない場合。
癒着が強固すぎるか、あるいは内部でサビによる固着が深刻化している可能性があります。
無理は禁物です。
鍵穴への5-56使用は厳禁!正しい潤滑剤の選び方
ハンドルや蝶番の動きが悪いとき。
DIYに慣れている方なら、市販の潤滑剤スプレーを使いたくなるかもしれません。
「KURE 5-56」などの防錆潤滑剤は、家庭に一本はある便利なアイテムです。
しかし、使用場所には厳格なルールがあります。
これを知らずに使ってしまうと、取り返しのつかない故障を招くことになります。
特に注意すべきなのは、「鍵穴(シリンダー内部)」には、絶対に一般的な油性潤滑剤を使ってはいけないという点です。
これはプロの間では常識ですが、一般の方にはあまり知られていません。
油性スプレーを鍵穴に吹き込むと、どうなるでしょうか。
最初は滑りが良くなったように感じるかもしれません。
しかし、鍵穴の内部は非常に精密に作られています。
そこに残った油分が、空気中の埃や汚れを吸着してしまいます。
やがてそれは、粘土状のヘドロのように固まってしまうのです。
こうなると、鍵が完全に回らなくなったり、差し込めなくなったりします。
洗浄しても元には戻らず、シリンダーごとの交換が必要になってしまいます。
| 使用箇所 | 適した潤滑剤 | 備考 |
| 蝶番(ヒンジ) | 油性スプレー(5-56等) | 隙間に浸透させることでサビや固着を解消できる。 |
| 可動部・軸 | 油性スプレー(5-56等) | ハンドルの回転軸など外部の金属部分には有効。 |
| 鍵穴(シリンダー) | 鍵穴専用パウダー | 【重要】油分を含まないパウダー状の潤滑剤のみ使用可。 |
もし、サビによる固着が疑われる場所が「蝶番」であれば、油性潤滑剤を使っても問題ありません。
蝶番の隙間に少量を塗布し、しばらく時間を置いて浸透させてから、ゆっくりと動かしてみてください。
それでも動かない場合。
あるいは、バールなどでこじ開けないと開かないような状態であれば、もう個人の手には負えません。
無理をせず、速やかに管理会社へ連絡するのが賢明な判断です。

扉の修理・交換費用はどこが払う?管理組合と居住者の責任区分
なんとか扉を開けることができたとしても、修理が必要になることもあります。
そこで最も気になるのが、「この修理費用は誰が払うのか」という問題です。
数万円で済むのか、それとももっとかかるのか。
マンションには、居住者全員で共有する「共用部分」と、個人の所有物である「専有部分」という区分があります。
しかし、メーターボックスの扉は、この境界線が非常に曖昧な設備の一つなのです。
法的には共用部分であっても、日常的に使用しているのは特定の居住者です。
ここに「専用使用権」という権利関係が絡んできます。
トラブルの原因や、マンションごとの管理規約の解釈によって、費用負担のルールは変わります。
管理組合の「修繕積立金」から出るのか、それとも居住者の「自腹」になるのか。
その判断基準を詳しく見ていきましょう。
管理組合の負担となる「共用部分」の経年劣化
一般的に、メーターボックスの扉本体や、外側の枠部分は、「共用部分」として扱われます。
なぜなら、これらは建物の外観を構成する要素であり、勝手に色を変えたり形を変えたりすることが許されないからです。
そのため、通常の使用環境下で発生した自然な劣化については、管理組合がその修繕責任を負うのが原則です。
具体的には、以下のようなケースが管理組合の負担となります。
- 経年によるサビ・腐食
雨風にさらされたことによる扉の腐食や、蝶番のサビつきなどです。これらは個人の使い方の問題ではなく、建物の維持管理の問題とされます。 - 構造的な不具合
地震によって建物のコンクリート躯体が歪み、その影響で扉枠が変形して開かなくなった場合。これも個人の責任ではありません。 - 第三者の施工不良
大規模修繕工事での塗装ミス(癒着)など、業者側の過失に起因する場合です。この場合は、管理組合を通じて施工業者に連絡し、保証(アフターサービス)で対応してもらうことになります。
これらのケースでは、個人の判断で勝手に修理業者を呼んで直してはいけません。
必ず管理組合や管理会社へ報告し、所定の手続きを経て修理を行う必要があります。
勝手に直すと、費用の請求ができなくなることもあるので注意してください。
居住者の自己負担になる「過失」と「専用使用権」の範囲
一方で、いくら共用部分であっても、居住者の負担となるケースがあります。
それは、居住者の使い方に問題があった場合です。
これを法的には「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)違反」と呼びます。
また、鍵やハンドル部分は、その住戸の居住者だけが使用する「専用使用権付き共用部分」と解釈されることが多いです。
電球やパッキンのように、細かな消耗品の交換は使用者負担とする規約を設けているマンションも少なくありません。
以下のようなケースは、居住者の負担となる可能性が高いでしょう。
- 鍵の紛失・破損
鍵をなくしてシリンダーを交換する場合や、無理な操作で鍵を折ってしまった場合です。 - 過失による損傷
子供が扉にぶら下がって取っ手を曲げてしまった。台車や荷物をぶつけて扉を変形させてしまった。こうした明らかな過失がある場合は、自己負担となります。 - 私物の詰め込み
メーターボックス内を物置代わりに使い、荷物が内側から扉を圧迫して開かなくなった場合。これはそもそも規約違反にも該当する可能性があります。
どこまでが管理組合負担で、どこからが個人負担になるか。
これは、各マンションの「管理規約」や「使用細則」にはっきりと明記されています。
トラブルになる前に、一度規約を確認しておくことを強くお勧めします。
賃貸マンションで壊れた場合のオーナー・入居者の負担ルール
分譲マンションではなく、賃貸マンションにお住まいの場合。
責任の所在は、「オーナー(貸主)」と「入居者(借主)」の間で判断されます。
賃貸借契約の原則として、建物の主要な設備や構造に関わる修繕は、オーナーの義務です。
したがって、サビによる腐食や経年劣化で扉が開かなくなった場合。
その修理・交換費用は、原則としてオーナーが負担します。
入居者が負担する必要はありません。
しかし、ここでも注意が必要です。
入居者が勝手に業者を呼んで修理し、後から領収書をオーナーに渡して「払ってください」と言っても、認められないことがあります。
必ず事前に、管理会社やオーナーへ連絡を入れ、指示を仰ぐことが重要です。
ただし、入居者の故意や過失による場合は別です。
鍵をなくした、酔っ払って蹴飛ばして壊した、といった場合は、当然ながら入居者の負担となります。
また、契約書に「小修繕は借主負担」という特約が入っている場合があります。
この場合、パッキンの交換やネジの締め直し程度の軽微な費用は、入居者が負担することになるケースもあります。
契約書の内容をよく確認しましょう。
管理組合向け MB扉の修繕費用相場とトラブル予防のメンテナンス
ここからは視点を変えて、マンションの資産価値を守る管理組合(理事会)に向けた情報を整理します。
もし、メーターボックスの扉の不具合が、ひとつの住戸だけでなく、複数の住戸で発生し始めたら。
それは、個別のトラブルではなく、建物全体が劣化しているサインかもしれません。
都度対応でバラバラに修理を繰り返すよりも、計画的なメンテナンスを行った方が、トータルのコストを抑えられる場合があります。
ここでは、修繕にかかる費用の目安と、トラブルを未然に防ぐための予防策について解説します。
部分補修・塗装・カバー工法のコスト比較
不具合の程度によって、選択すべき修繕方法は異なります。
それぞれの工法における費用感と、メリット・デメリットを把握しておくことが大切です。
長期修繕計画と照らし合わせながら、最適な選択を行ってください。
| 工法 | 費用相場(1箇所) | 特徴 |
| 部品交換 | 1.2万 ~ 3.5万円 | ハンドルや蝶番のみを交換します。安価ですが、扉本体のサビや枠の歪みには対応できません。古い部品が廃盤になっているリスクもあります。 |
| 鉄部塗装 | 数千円 ~ 1.5万円 | サビを落として再塗装します。延命措置として必須ですが、既に穴が開くほどの腐食には効果が薄いです。全戸一斉実施で単価を抑えられます。 |
| カバー工法 | 5万 ~ 20万円 | 既存の枠の上に新しい枠を被せ、扉ごと新品にします。枠の歪みも解消でき、耐震性も向上しますが、費用が高額になります。 |
築20年~30年を超えると、塗装だけでは維持できないほど腐食が進行するケースが増えてきます。
また、古い部品がメーカーで製造中止になり、手に入らなくなることもあります。
その場合は、長期修繕計画に「玄関扉・MB扉の一斉交換(カバー工法)」を組み込むことを検討すべきです。
早めに資金計画を見直すことで、将来の負担を平準化することができます。
大規模修繕時における塗装癒着の防止策
管理組合として特に注意したいのが、大規模修繕工事の際に行われる鉄部塗装の品質管理です。
前述の通り、塗装工事後に扉が開かなくなる「癒着」トラブルは、施工業者の配慮不足によって引き起こされます。
これを防ぐためには、工事仕様書や発注時の条件において、以下のポイントを明確にしておくことが効果的です。
- ケレン(下地処理)の徹底
単に上から塗料を塗るだけでは意味がありません。古いサビや浮いた塗膜を削り落とす「ケレン」を確実に行うよう指示します。サビが残っていると、内部で腐食が進行し、短期間で再び不具合が発生してしまいます。 - 「縁切り」工程の確認
塗装乾燥後に、扉と枠の隙間にカッターを入れて塗膜を分離させる「縁切り」作業。これを必須項目とし、完了検査で理事や修繕委員が実際に開閉確認を行うようにします。 - 居住者への周知
「塗装直後は扉を強く閉めないでください」「乾いた後に、一度開閉確認を行ってください」といった注意喚起を、工事期間中に掲示板やチラシで徹底します。
メーターボックスの扉は、普段はあまり目立たない存在です。
しかし、いざという時に開かないと、居住者の安全を脅かすことになります。
「開かない」という声が上がり始めたら、それを単なる苦情として処理してはいけません。
建物全体のメンテナンス計画を見直す良いきっかけと捉えること。
それが、賢明な管理組合運営と言えるでしょう。
