
はじめに
「こんなはずじゃなかった……」
マンションを購入した多くの人が、数年後にそうこぼします。
理由の多くは“資産価値の下落”。
住み心地とは裏腹に、将来売ろうとしたとき値段が大きく下がってしまう。
これは、目に見える内装や立地よりも、「見えにくい管理と修繕」に関わるケースがほとんどです。
私自身、築15年の中古マンションを買った直後に「大規模修繕が5年遅れている」と知らされ、胃がキリキリと痛んだ経験があります。
それでも、正しい情報をつかんでいれば回避できた話なのです。
実のところ、多くの人は「修繕積立金がいくら必要か」「管理組合が機能しているか」なんて意識しません。
でも、それが後で大きな代償となって返ってくるのです。
この記事では、信頼できるデータを元に、マンションの価値を落とさない選び方を紹介していきます。
買って終わりじゃない。
10年後も資産として誇れるマンションを、一緒に見つけていきましょう。
管理体制と積立金の透明性が将来の価値を支える
管理組合の運営と管理費合算額30,481円が示す管理力
管理費と修繕積立金を合わせた平均額は全国で月30,481円です(国土交通省「分譲マンション実態調査」2023年度版)。
「高いな…」と感じるかもしれません。
けれど、これは将来の安心を買う“保険料”とも言えるのです。
私が最初に見学したあるマンションでは、月額2万円を切っていました。
一瞬「お得!」と思ったのですが、よく見ると修繕履歴がスカスカ。
案の定、5年後に大規模修繕で一時金60万円を請求されたと聞きました。
そんな落とし穴、避けたいですよね?
管理組合がしっかり機能しているかどうかは、収支報告書の公開状況でもわかります。
掲示板に議事録が貼られているか、修繕計画が開示されているか。
細かいようですが、こうした小さな“情報の透明性”が、大きな安心につながるのです。
不透明なマンションほど、将来のトラブルも見えにくい。
そう思いませんか?
長期修繕計画作成率88%、計画期間30年以上が72.7%
長期修繕計画があること、それがまず最低ラインです。
最新の国交省調査(2023年)では、88%の管理組合が長期修繕計画を作成しています。
さらに、そのうち72.7%が「30年以上」を見越した計画です。
逆にいえば、10年以上のスパンで考えられていないマンションが、2~3割存在するということ。
この差が、10年後の資産価値に如実に現れるのです。
たとえば、同じ築20年でも、計画的に修繕されてきた物件とそうでない物件では、売却価格に100万以上の差がつくことも。
数字では見えない“質”が、積み重なって結果になるのです。
以前、築浅で人気のエリアにある物件を検討しました。
が、修繕計画がなぜか10年分しかなく、不動産会社の担当も説明を濁すばかり。
“見せられない過去”があるのではと感じ、購入を見送りました。
後に、雨漏りで住民訴訟が起きていたと知ったとき、背筋がゾクッとしました。
長期視点で「備えてきた実績」が、未来の価値を守ってくれるのです。
現在積立額が計画不足状態は約36.6%に上り注意が必要
国交省の「分譲マンション実態調査」によれば、36.6%のマンションが「積立金不足」に陥っています。
つまり、今の積立額では将来の修繕費に足りないということ。
特に築15年を超えた物件では、このリスクが顕在化してきます。
あなたが住み始めて数年後、「大規模修繕があるから一時金で30万円払ってください」と言われたら……?
心の準備、できていますか?
実際、私の友人は「中古で格安だった」と喜んでいたのも束の間。
わずか3年後に、共用設備の劣化で60万円の一時徴収が来たそうです。
安さには理由がある。
特に管理と修繕にかかるお金は、“見えないコスト”として後から請求されます。
だからこそ、今いくら積み立てていて、計画と照らして適正かどうかを自分の目で確認する。
面倒でも、それが将来の後悔を消す唯一の方法です。
修繕積立金の水準で見る健全性と負担感
修繕積立金月平均13,378円、単棟型は13,300円団地型13,535円
静かに、じわりと効いてくるのが修繕積立金です。
国土交通省の調査(2023年)によると、全国平均で月13,378円。
タイプ別に見ると、単棟型は13,300円、団地型は13,535円と大差はありません。
ただし、これはあくまで平均値。
築年数や規模によって実態は大きく異なります。
私が以前検討していた築18年のマンションでは、毎月の積立額が1万円を切っていました。
「ラッキー!」と思ったのも束の間。
担当者に質問を重ねると「増額前提です」とポロリ。
しかも、住民合意が取れず、計画が進まずにいるとのこと。
その瞬間、積立額の低さは不安材料でしかなくなりました。
月額が安い=お得、とは限らない。
あなたは、その“数字の裏”を見抜けていますか?
築20年で積立金1.1万円→1.33万円へ増額傾向
気づかぬうちに、じりじりと上がっているのが修繕積立金です。
マンションの経年劣化に伴い、修繕費用は上昇します。
ある統計では、築20年の時点で平均11,000円だった積立金が、築30年では13,300円以上に。
これは当然の流れといえばそうですが、住民にとっては地味に効いてくる負担です。
特に、年金生活を迎える世代にとっては深刻な打撃となることも。
私は以前、管理組合の役員として「増額の必要性」を住民に説明する立場でした。
「なんで今さら?」「昔はもっと安かったのに」との声が飛び交い、会議室がピリついたのを覚えています。
とはいえ、実際に足りないものは足りない。
将来のために、今備えるしかありません。
その覚悟があるかどうか。
それが、健全なマンションか否かの分かれ道になるのです。
小規模物件ほど管理費は割高、20戸以下では月約12,081円差額発生
見落としがちですが、戸数もコストに直結します。
日本マンション管理士会連合会によれば、20戸以下の小規模マンションは、修繕コストが割高になる傾向があります。
たとえば、同じエレベーター1基の費用でも、10戸で割るのと50戸で割るのとでは、1戸あたりの負担が全然違う。
実際、小規模マンションでは、20戸以上と比べて月平均12,081円もの費用差が出るというデータもあります。
私の知人は、眺望と静けさに惹かれて10戸の小規模マンションを購入しました。
住み心地は最高だったそうです。
が、ある日突然「修繕積立金を倍にします」と通知が届いたとき、夫婦で青ざめたと。
小規模=親密な暮らし、ではあるけれど、コスト分散の観点では不利な面も否定できません。
あなたが求めるのは“静けさ”ですか?それとも“安定性”ですか?
数字が語る現実を、ちゃんと見つめて判断したいですね。
長期修繕計画と資産価値維持が担保される選び方
5年ごとの計画見直し63%、更新せずに放置される物件は約37%
ふと立ち止まって、あなたのマンションに修繕計画はありますか?
そして、その計画、定期的に更新されていますか?
国土交通省の最新調査では、5年に一度の見直しを行っているのは全体の63%ほど。
つまり、約4割のマンションでは計画が放置されたまま、という事実。
私が以前内見したマンションでも、「初回計画から一度も更新されていません」と言われ、背筋がゾクリとしました。
エレベーター、給排水管、外壁……
それらが10年後にどうなるかを描かないまま、ただ時が過ぎている物件は意外と多いのです。
「今は大丈夫だから」と先延ばしにされがちですが、備えのない未来に安心はありません。
とはいえ、全ての修繕が明記された完璧な計画など、存在しないのも事実です。
だからこそ、見直されているかどうか、その“動き”が信頼の証なのです。
あなたは、止まった時計のような計画を信じられますか?
均等積立方式41%、段階増額方式47%で負担設計が異なる傾向
お金の積み方にも、思想があります。
均等に積み立てるか、段階的に上げていくか。
国交省の報告では、41%が均等積立、47%が段階増額方式を採用しています。
残りはその中間や独自方式。
どちらが良いとは一概に言えません。
ただ、住民の年齢構成や収入状況に応じた設計でなければ、やがて破綻します。
私が住んでいたマンションでは、当初の安さ重視で段階増額方式を採用。
10年後、大幅な増額案が出たとき、高齢世帯の反発で決議が通らず工事が遅れました。
その結果、外壁のひび割れが雨漏りに発展。
想定外の出費が発生し、住民トラブルにも発展してしまいました。
均等積立であれば早くから準備できたのに……と悔やまれます。
積み立ての「方法」にも、未来のトラブルを左右する要素が潜んでいるのです。
あなたのマンション、その仕組みに納得できますか?
高齢化と収入減少で築15年以降、負担増に見合う設計が重要
マンションも人も、年を取ります。
築15年を過ぎると、給排水管や外壁、防水など、大規模修繕が次々にやってきます。
一方で、住民の多くがリタイア世代に突入し、収入は減る。
修繕費は増え、払える力は減る。
この“逆行するバランス”を、どう取るかが問われる時代です。
知人のケースでは、築20年を超えたタイミングで修繕積立金が月3万円に跳ね上がりました。
理由は、当初の積立設計が甘かったため。
「ここまで急に上がるとは…」と、住民から悲鳴が上がったそうです。
一部の世帯は売却を選び、結果的に空室率も増えました。
つまり、資産価値が下がったということ。
最初に設計された積立計画が“現実”を想定していなかった代償です。
未来を見据えた積立設計には、ライフステージの変化を織り込む視点が必要です。
あなたの老後、その家計は耐えられますか?
まとめ
マンション選びは、間取りや価格だけでは測れません。
見えにくい部分――それこそが、10年後の「資産」となるか「負債」となるかを分けます。
修繕積立金の水準、計画の更新頻度、そして住民との合意形成の仕組み。
これらを見過ごすと、いずれ大きな代償を払うことになるでしょう。
私がこれまで関わってきた中でも、表面上は同じように見える2つの物件が、5年後には資産価値で200万円以上の差をつけた例がありました。
背景にあったのは、ただひとつ。
「管理」と「修繕」に対する意識の差です。
たとえば、計画通りに積み立てられ、修繕も滞りなく行われていたマンションは、買主からの信頼も厚く、スムーズに売却が成立しました。
反対に、積立不足や未実施の修繕が目立つ物件は、内見者がいてもすぐに断られる。
“数字”と“信頼”は不動産価値に直結するという現実です。
そして、選ぶだけでは終わりません。
購入後、住民としてどう関わるかも問われる時代になりました。
管理組合への参加、総会での意見、共用部分の使い方。
すべてが、自分と家族の暮らしやすさ、そしてマンションの価値を形づくっていきます。
未来の自分が、「この選択は正解だった」と思えるように。
いま、目をこらして“数字の奥”を見抜いていきましょう。