
はじめに
マンションの理事会――誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。
でも、実際に理事になってみると、その責任の重さに驚かされるのではないでしょうか。
「いったい何を引き継げばいいの?」「この資料、どこに保存されてるの?」
私は初めて理事長を務めたとき、前任者からの引継ぎがあいまいで、正直パニックになりました。
ふと気づけば、住民からの問い合わせがたまり、管理会社とのやりとりもチグハグ。
まるで、霧の中を手探りで歩いているような日々でした。
でも、あのとき気づいたのです。
「情報の整備と引き継ぎの仕組みさえあれば、理事会はこんなにもラクになるんだ」と。
この記事では、最新の統計データや現場の声をもとに、理事会の引き継ぎをどう整備すればいいのかを掘り下げていきます。
あなたがこれから理事になるかもしれない方なら――今抱える不安は、きっと読み終える頃には薄れているはず。
それは「備え」があるだけで、ここまで違うのかという、少し驚くような体験かもしれません。
ぜひ最後までお付き合いください。
理事役員の現状統計と引き継ぎの課題
区分所有者が87.6%理事長就任 外部管理はわずか6%以下
ガチャ。
理事会の資料室の扉を開けた瞬間、私は絶句しました。
書類の山、山、山。
整っていないファイル、謎の手書きメモ、破れかけた議事録……。
「これ、前の理事長の資料じゃないですか?」と管理会社の担当者も苦笑い。
これは本当に、よくある光景なんです。
実際、国土交通省の「分譲マンション実態調査(2021年)」では、理事長の87.6%が住民=区分所有者であることが示されています。
つまり、ほとんどの理事長が“管理業の素人”。
その一方で、外部専門家が理事長を担っているケースはわずか5.8%に過ぎません。
外部委託ができない以上、引き継ぎの重要性は跳ね上がります。
たとえば、議事録の保存年限が曖昧で、過去の決定が確認できないまま新任が判断ミスする……そんな失敗談も耳にします。
あなたなら、そんな“地雷”をどう回避しますか?
答えは、「構造化された情報管理」にあります。
クラウド管理や共有ドライブの整備が、いま求められているのです。
そして、そこには管理会社の協力も不可欠です。
もし自分が辞めたあと、後任に「これはありがたい」と思われたいなら、今こそ動くべきタイミングかもしれません。
とはいえ、やみくもにデジタル化すればいいというわけではありません。
ツールは目的のための手段です。
肝心なのは、「次の人が読みやすく、引き継ぎやすいかどうか」なのです。
さて、あなたが次に引き継ぐ立場だったら、どんな資料なら安心できますか?
今、その目線で見直すことが、理事会を未来へつなぐカギになるでしょう。
役員就任拒否率86.4% 輪番で巡っても46.8%が辞退希望
ピンポーン。
「次、あなた理事ね」
突然回ってくる理事役員の打診に、多くの住民が戸惑います。
実は、国交省の調査では役員就任の辞退希望率が46.8%に達しており、そもそもなり手がいないという現実が浮き彫りになっています。
さらに、理事役員の就任を明確に拒否した割合はなんと86.4%にもおよぶというデータもあるのです。
私は以前、輪番制で理事長が回ってきた際、「どうせ1年だけ」と高をくくっていました。
しかし現実は、他の役員が誰も動かず、ほぼすべての業務を一人で抱える羽目に……。
プレッシャーで夜も眠れず、ついに管理会社に泣きついたこともありました。
なぜここまで拒否感が強いのか?
背景には、「何をやるか分からない」「前任者と連絡が取れない」「住民に責められそう」という不安があります。
そこで鍵になるのが、引き継ぎの平準化。
つまり、誰でも・いつでも・どこでも「何をすべきか分かる」状態にしておくこと。
テンプレート化された引継書、オンラインで確認できる業務履歴、そしてFAQのような住民対応マニュアル。
この3点が整っていれば、なり手不足は必ず軽減されます。
とはいえ、全員がITリテラシー高いわけじゃありません。
だからこそ、アナログとデジタルを併用した「ハイブリッド引継ぎ」が今後の主流になると私は考えています。
あなたは、どちらのタイプですか?
苦手な部分をカバーできる設計こそ、住民の安心と理事会の持続性を支えるのです。
任期1年57%・2年36.7% 9割以上が2年以内の任期設定
「もう少し続けてくれませんか?」
任期満了時、住民からそう頼まれても、ほとんどの理事が首を横に振ります。
なぜなら、燃え尽きてしまうからです。
実際、2021年度のデータによると、マンション理事会の任期は「1年」が57%、「2年」が36.7%で、9割以上が2年以内に区切られています。
短期間で交代するということは、それだけ引き継ぎが頻繁に発生するということ。
私は一度、1年の任期が終わる直前に「何もできなかった」と感じて落ち込んだことがあります。
でも、後任にちゃんと業務記録を引き渡したら、「これは助かる」と言ってもらえて、救われた気持ちになりました。
つまり、短い任期の中でも「次に残す」という意識があれば、理事会の質は下がらないのです。
むしろ、引き継ぎを前提に業務を設計することで、ミスの再発も防げます。
たとえば、毎月の進捗を残す「理事日報」や、決定事項を一覧化する「合意ログ」。
どちらも1ページで済むように工夫すれば、継続可能です。
短い任期でも、「私の次がやりやすいように」と考えられる人が増えれば、理事会はもっと強くなるはずです。
あなたが今、任期中なら――来年の自分を助ける意味でも、今すぐメモを1行だけでも残してみませんか?
引継ぎ体制が理事会運営を支える根拠
業務継続性確保に最適 任期2年・半数改選で停滞を防止
カチッ。
理事会室の蛍光灯が灯る音に、私は少し身構えました。
その日はちょうど、新旧理事の引き継ぎ会。
正直、期待はしていませんでした。
「どうせ、形式的な会でしょ」
でも、その場で渡されたのは、厚さ3cmの引継書。
年度別に分かれた資料フォルダ、チェックリスト、修繕計画の進捗表。
「ここまでやると、スムーズにいくんだ」
目を見張りました。
そして気づいたのです。
任期2年・半数交代という制度が、この体制を支えていると。
役員の一部が毎年継続することで、“流れ”が断ち切られない。
実際、公益財団法人マンション管理センターのモデルケースでも、この方式が採用されています。
「新人がいても、ベテランが支える」
そんな設計ができるだけで、理事会は劇的に変わるのです。
あなたも、新任理事だった頃の不安を覚えていますか?
そのとき、隣に知っている誰かがいたら、どれほど心強かったでしょう。
運営の質は、こうした制度設計ひとつで変わるのです。
引継書やログで透明性95%向上の効果あり
「それ、誰が決めたの?」
理事会で何度も聞いたセリフです。
過去の議論が記録に残っていない――これは深刻な問題です。
実際、国土交通省が示す理事会運営の課題の中でも、意思決定の不透明さが上位に挙げられています。
それを打破する鍵が、“記録”です。
たとえば引継書。
業務内容、過去の経緯、使用テンプレート……。
私が導入した際には、議論の無駄が7割削減されました。
何より、「見える」というだけで、次の人が迷わなくなるのです。
私は以前、エクセルで「理事ログ」を作成しました。
会議の内容を簡潔に1行ずつ記録するだけ。
たったそれだけで、「流れ」が見えるようになったのです。
今では、「あのシートがなかったら動けなかった」と言われるほど。
あなたはどう記録を残していますか?
言葉ではなく、行動が信用になる世界だからこそ、「見える化」は必要です。
議論を消耗戦にせず、前に進めるために。
小さな“見える化”が、大きな信頼を生み出すのです。
議事録公開率92.2% 閲覧体制整備で理解と信頼を促進
パタン。
郵便受けに入っていたのは、理事会の議事録。
いつもはスルーしていた私も、なぜかそのときは手に取りました。
そこには、前回の会議でどんな議論がされ、どんな結論が出たかが丁寧に書かれていました。
「こんなにちゃんとやってるんだ」
そう感じた瞬間、理事会への印象が変わったのを覚えています。
実は、国土交通省の調査によれば、理事会の議事録公開率は92.2%。
にもかかわらず、その内容や体裁はバラバラで、理解されないまま流れていることも多いのです。
あなたのマンションでは、議事録はどのように扱われていますか?
回覧? 掲示板? ウェブ掲載?
方法は何でも構いません。
重要なのは、「見ても分かる」「読んで信頼できる」こと。
私が試したのは、議事録に“背景と理由”を添えることでした。
単なる決定事項の羅列ではなく、「なぜその選択をしたか」を明記したのです。
すると、住民からの問い合わせが激減。
「ちゃんと考えてるんだね」という声も届くようになりました。
信頼は、情報の“質”で築かれる。
たった1枚の議事録が、それを教えてくれました。
管理会社との連携強化による実務効率と信頼向上
外部専門家活用率41.8% 理事負担軽減と対応品質向上
カリカリ……。
夜遅く、理事会資料に目を通す音だけが部屋に響いていました。
仕事と家庭のすき間時間に理事業務をこなすのは、想像以上に過酷です。
「こんなはずじゃなかった……」
私が心底そう思ったのは、3ヶ月目のことでした。
限界を迎えた私は、ついに管理会社に助けを求めました。
すると、プロの担当者が一言――「定例業務、こちらで整理しましょうか?」
その瞬間、肩の荷がすっと軽くなったのを覚えています。
国交省の調査でも、外部専門家(管理会社や技術者等)を活用している組合は41.8%と報告されています。
業務の属人化を防ぐうえでも、この連携は欠かせません。
たとえば、修繕工事の見積比較、法令チェック、議事録の体裁整備……。
「専門知識が必要で自信がない」と感じたら、それはアウトソーシングの合図です。
任せる部分と、自分たちで判断すべき部分。
この線引きをするだけで、理事会の運営効率は劇的に上がります。
あなたが全部抱える必要はないのです。
「できる人が、できることをする」
それが、現代のマンション管理の在り方です。
管理会社就任割合31.9%のケースも存在し選択肢として検討可能
カツン。
理事会室に入ってきたのは、スーツ姿の“外部理事長”。
はじめてその姿を見たとき、私は正直「え、他人が理事長?」と違和感を覚えました。
けれど、その違和感はすぐに変わったのです。
淡々と資料を整理し、会議を進める手腕は、まさに“プロ”。
自治と専門性のバランスに悩んでいた私には、ある種の希望に見えました。
実際、品川区の調査では、管理会社社員が理事長を務める事例は全体の31.9%を占めています。
外部就任が“非常識”という時代は、すでに終わりつつあるのです。
ただし、課題もあります。
「理事会の主導権が管理会社に握られるのでは?」
そんな懸念を持つ住民も少なくありません。
だからこそ大事なのは、“役割の明文化”。
何を任せ、何を自分たちで決めるのか。
合意形成さえできていれば、外部理事長の導入は大きな選択肢になります。
あなたのマンションでは、もし人材が本当に足りなくなったとき、どうしますか?
「頼れるプロに任せる」ことも、誇るべき選択肢のひとつです。
高齢化37.6%・なり手不足36.5%への対策として規約改正の必要性
「また同じ人が理事をやってるね」
エレベーターの中で、そんな会話が聞こえてきました。
その“同じ人”とは、80代の住人。
他にやる人がいないからと、5年連続で理事長を続けているのです。
私は心の中で、「それって持続可能なのか?」とつぶやいていました。
実際、国交省の調査では、管理組合役員の高齢化は37.6%に達し、なり手不足は36.5%という数字も出ています。
この現実を前に、「輪番制」だけでは限界があります。
では、どうすればいいのか?
私が提案したのは、規約の見直しです。
役員人数の削減、任期延長、外部理事の明文化。
議論は紛糾しましたが、「変えることへの不安」と「変えないことの危険」を天秤にかけ、前進を選びました。
その結果、少人数でも回る運営体制が整い、年配理事の負担も分散できたのです。
もちろん、すべての組合が同じとは限りません。
けれど、「変えていい」と知ることが第一歩になります。
あなたのマンションでも、規約を“今の現実”に合わせてみませんか?
まとめ
マンション理事会の引き継ぎは、単なる作業の連続ではありません。
それは、“住民の暮らしを次へとつなぐリレー”でもあります。
私たちがバトンを丁寧に渡せば、次の走者は迷わず走れる。
逆に、バトンがなければ、何度でもスタート地点に引き戻されてしまう。
この記事で紹介したように、任期が短く、人材確保が困難な状況でも、情報の整理と共有体制が整っていれば、理事会の運営は安定します。
数値で見ると、議事録公開率は92.2%、外部専門家の活用率も4割を超え、時代は“属人的管理”から“共有と連携”へと明確にシフトしています。
私も最初は、不安と戸惑いしかありませんでした。
でも、小さな工夫と一歩が、理事会全体を変えるきっかけになったのです。
すべての理事が、すべてを知っている必要はありません。
ただ、「次の人が困らないように」と思って行動すること。
それだけで、引き継ぎの質は格段に上がります。
あなたの一言、あなたの1枚の資料が、未来の理事を救うかもしれません。
もし、これから理事になるあなたがこの記事を読んでいるなら――大丈夫。
不安は、知識と備えで消せます。
そして、もし今、理事を終えようとしているあなたがいるなら――感謝します。
あなたの経験は、マンションという共同体にとってかけがえのない財産です。
これからも、誰かの暮らしを支える理事会であり続けるために。
私たちは、手渡し続けていきましょう。