
はじめに
マンションを売ろうと思った瞬間、不安がズシリと心にのしかかってきます。
「いつ売れるんだろう?」「損をせずに売れるのかな?」
そんな疑問が頭の中をグルグル回るのは、決してあなただけではありません。
実は、私が初めてマンションを売却したときも、何を信じて動けばいいのか分からずに、ネットの情報を鵜呑みにして失敗した経験があります。
査定は一社のみ、手数料はそのまま、内覧前の準備もほぼゼロ。
結果、当初想定していた金額から約300万円も値下げしての売却となりました。
いま思えば、「売る前に知っておくべきこと」を知らずに動いた自分を責めたくなります。
だからこそ、この記事ではリアルな統計と現場の知見を交えながら、売却で後悔しないための道筋を描いていきます。
一歩ずつ、じっくりと進めば大丈夫。
あなたにも納得のいく売却が、きっと実現できるはずです。
成約平均3.0か月&成約価格3849万円!首都圏中古マンションのリアルな実情
レインズでは中古マンションの平均販売~成約日数は約82.6日(2023年)
首都圏で中古マンションの成約にかかる平均日数は、約3か月です。
これはレインズ(不動産流通標準情報システム)が公表している最新の統計で、2023年の平均販売期間は82.6日とされています。
最初にこの数字を見たとき、「意外と早いかも?」と思った方もいるかもしれません。
ただし、これはあくまで成約が成立した後の話。
実際には「売る」と決めてから、査定依頼、準備、掲載、内覧、交渉…といったステップを踏む必要があり、全体では5か月以上かかるケースも多いのです。
特に、売却活動がスムーズにいかなかった場合や、買主との条件調整に時間を要する場合には、半年近くかかることも珍しくありません。
私自身、初回の売却では内覧数ゼロのまま2か月が経過し、「なぜ誰も来ないのか」と悩みました。
掲載写真が暗く、説明文も素人感丸出しだったことに気づいたのは、だいぶ後になってからでした。
そう、成約までの“平均”の裏には、売主側の準備や戦略の差が大きく影響しているのです。
とはいえ、焦る必要はありません。
適切な手順と理解があれば、この平均日数内に満足いく売却は可能です。
そのためには、まず現状を冷静に把握することが出発点となります。
今の市場で、あなたのマンションは「どの位置にあるのか」—
それを知ることで、戦い方が見えてきます。
全国既存マンション成約価格は3849万円、前年比+7.36%と49か月連続の上昇
成約価格についても、しっかり現実を見ておきましょう。
公益財団法人東日本不動産流通機構(通称レインズ)が発表した2024年上半期のデータによれば、全国における中古マンションの平均成約価格は3849万円。
前年比で7.36%も上昇し、実に49か月連続で価格は右肩上がりを続けています。
これは驚くべきことです。
少子化や空き家問題が叫ばれる中でも、都市部を中心に「住宅ニーズ」は依然として根強く、特に駅近や築浅などの条件が整った物件には高値がつきやすい傾向があります。
「どうせ古いから安くなるんでしょ?」という先入観は、もはや過去のものかもしれません。
実際、築20年以上でもフルリノベーションされた物件が4000万円超で成約する事例も多数あります。
とはいえ、すべての物件が高騰しているわけではありません。
エリアの需給バランスや築年数、階数、眺望、管理状況など、細かい条件で金額は大きく変わります。
たとえば同じ「築15年・70㎡」でも、駅徒歩3分と徒歩12分では300万以上の差がつくこともあるのです。
このように、数字だけを鵜呑みにせず、「自分の物件ならどうか?」という視点でデータを見ることが大切です。
だからこそ、次章では査定や価格設定にどう向き合うべきか、さらに掘り下げていきましょう。
売却準備含めると実際は5~6か月が標準、余裕あるスケジュールが成功の要
マンション売却は、思い立ったその日から始まるわけではありません。
実際には「査定依頼」「修繕・片づけ」「掲載写真撮影」「販売戦略の立案」など、事前準備にかかる時間を含めると、平均で5〜6か月を要することが多いです。
この点を見落としてしまい、「来月までに売りたい」と焦ってしまう方も少なくありません。
しかし、焦りは失敗のもと。
私が初めて売却に動いたとき、急いでいたがゆえに業者選びを怠り、高すぎる査定額に飛びついてしまったことがありました。
結果、3か月売れずに値下げ。
それでも反応が鈍く、最終的に周辺相場より150万円以上低い価格での成約となった苦い記憶があります。
「もう少し余裕があれば、ちゃんと比較できたのに…」と、後悔ばかりが残りました。
ですから、スケジュールには“ゆとり”を持たせてください。
内覧の調整や買主との条件交渉にも時間がかかりますし、想定外の修繕リクエストが入ることも。
時間に追われながら売却活動を進めるのではなく、一歩一歩確実に積み上げていく感覚が大切です。
市場の動きや季節要因も見ながら、「今売るべきか、数ヶ月後がよいか」も含めた判断をすること。
それが、後悔しない売却への第一歩になります。
相場把握と査定比較で「価格交渉力」を最大化する秘訣
レインズ・国交省価格情報で㎡単価や築年別相場を精査
机の上に広げたプリントの数字を、じっと見つめながら眉をひそめる——。
「この数字、本当に妥当なの?」と、初めてマンション査定を受けたとき、私は真っ先に疑いました。
不動産会社から提示された金額は、思っていたよりもずいぶん高かったのです。
嬉しさ半分、不安半分。
実際、売れるのか。
それとも、甘い見積もりなのか。
そんなときに役立ったのが、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や、レインズの公開データでした。
例えば、同じエリア・築年数・広さの条件を入力すれば、直近の成約価格の実績を一覧で確認できます。
自分の物件と見比べて、どこが強みで、どこがネックになりそうかが見えてくるのです。
たとえば築15年、駅徒歩7分の物件が3850万円で成約していたとします。
自分の家は築17年で徒歩10分、同じ広さ。
価格を参考にしつつ、日当たりや管理状態で上乗せできるのか、逆に下がる要素があるのか判断材料になります。
ネットには「無料査定」「AI査定」といった簡易ツールが溢れていますが、あれはあくまで“ざっくり目安”。
本気で売却を考えるなら、地価や築年数、階数、管理状況まで加味された生のデータに触れてください。
情報を制する者が、価格を制する。
それが売却の現場で痛感した真実です。
オンライン査定だけじゃ足りない!実地査定で数百万円の差を防ぐ
クリックひとつで完了するオンライン査定は便利です。
ですが、それがすべてだと思い込むと、後々のズレに苦しむことになります。
私が2回目の売却をしたとき、最初に使ったのは某大手ポータルサイトの簡易査定。
表示されたのは3,500万円前後の数字。
その数字に安心していたのですが、念のため3社に実地査定をお願いしたところ、実際の提示額はなんと最大3,780万円まで跳ね上がったのです。
その差、実に280万円。
もちろん、すぐにその最も高かった会社と契約した…わけではありません。
金額だけで判断するのは危険だからです。
むしろ、3,680万円を提示した会社の方が、価格の根拠を丁寧に説明してくれたうえ、販売戦略やターゲットまで練られていました。
信頼は「数字」だけでなく「説明」と「実行力」に宿る。
そのことを実感した一件でした。
机上のデータと実地での“肌感覚”は、意外と大きく違うものです。
部屋のにおい、陽の入り方、周辺環境の音——そういった感覚的な要素は、現地を見なければわかりません。
だからこそ、現場での査定は欠かせないのです。
現場を知っている担当者は、交渉力にも直結します。
売却後に「あのとき確認しておけばよかった」と悔やまないように、現地での査定を大切にしてください。
複数社比較で「根拠ある価格+交渉プラン提案」を評価
「高く売れるなら、それに越したことはない」
そう考えるのは当然です。
しかし、現場では“高い査定”が落とし穴になることも少なくありません。
私は過去に、提示額が一番高い不動産会社に任せた結果、半年間売れ残った経験があります。
周辺相場より明らかに高かったため、内覧は数件だけ。
しかも「価格を下げて再掲載しませんか?」と提案される始末でした。
悔しさとともに、「最初の判断を間違えたかも」と胸を締め付けられました。
そこで学んだのは、“納得感ある説明”の重要性です。
例えば、「近隣の成約実績」と「内覧数の推移データ」、それに「販売時のターゲット層分析」まで提示してくれる会社は、本当に信頼できます。
数字が独り歩きしていないか、説明に整合性があるか、それを見極める目が求められます。
さらに、「この価格なら3か月以内に売れる可能性が高い」と時期と戦略を合わせてくれる担当者は、心強い存在です。
単なる数字の競い合いではなく、“根拠と筋道”を比較していく。
それが、本当に納得できる売却につながると確信しています。
手数料・諸費用・予備資金で「利益を守る」テクニック
仲介手数料3%+6万円の上限でも差額数十万円、見積り比較は必須
マンションを売るとき、仲介手数料は見落とされがちですが、実は大きなコストです。
宅建業法では「売買価格の3%+6万円(税別)」が上限とされています。
でも、実務ではこの“上限いっぱい”を請求する会社が圧倒的に多いのが現実です。
それだけならまだしも、同じ価格帯でも業者によって見積もりの出し方やサービス内容に差があることも少なくありません。
たとえば、ある会社では写真撮影や広告出稿が手数料に含まれていましたが、別の会社では追加料金がかかると言われました。
私は以前、説明の丁寧さに惹かれて契約した会社で、あとから「これはオプションです」と費用を上乗せされた苦い経験があります。
見積書をきちんと比較していれば避けられた後悔でした。
今ならわかります。
安い手数料が必ずしもお得とは限らないし、逆に高くてもサポートが充実していれば納得できるケースもある。
だからこそ、「何が含まれていて」「何が別料金なのか」を事前にしっかり確認し、複数社の見積もりを比較することが不可欠です。
1社だけを見て決めるのは、まるで試着せずに高級スーツを買うようなもの。
あなたのお金を守るためにも、慎重すぎるくらいでちょうどいいのです。
登記・ローン返済・税金清算など諸費用のチェックリスト作成
「えっ、そんなにかかるの?」
売却後、想定より手元に残る金額が少なかったと感じた方は意外と多いものです。
仲介手数料だけに気を取られていると、その他の“諸費用”がボディブローのように効いてきます。
たとえば、登記費用。
名義変更や抵当権抹消登記などが必要となり、司法書士への報酬も発生します。
住宅ローンが残っていれば一括返済の手数料が必要ですし、銀行によっては違約金が加わることもあります。
さらに、固定資産税や管理費、修繕積立金なども日割りで精算が発生します。
ここに引っ越し費用やリフォーム・クリーニング代が加わると、あっという間に数十万円単位の支出になるのです。
私の場合、登記費用とローンの手数料を完全に見落としていて、想定より40万円ほど手取りが減りました。
あのとき、「細かい計算は業者がやってくれるだろう」と甘えていたのが間違いでした。
今では、売却に入る前に“自分のための諸費用チェックリスト”を作ることを強くおすすめしています。
紙に書き出しておくだけでも、見落としを防げます。
ネットで調べれば、おおよその目安も出てきます。
必要なら、不動産会社や司法書士に「うちの場合はいくらくらいかかりそうですか?」と遠慮なく聞いてください。
知らなかったでは済まされない、それが“諸費用の現実”なのです。
成約価格の2%程度を予備費として確保し、突発的な修繕や条件交渉に備える
売却というのは、思いがけないトラブルとの戦いでもあります。
「え?こんなところが壊れてたの?」
「エアコンは残せないんですか?」
「買主が急に条件を変えてきた…」
現場では、こんなやりとりが日常茶飯事。
だからこそ、“予備費”を持っておくことは心の余裕にもつながります。
一般的には、成約価格の1〜2%程度を目安にしておくと安心です。
私が直面したのは、引き渡し1週間前の水漏れでした。
床が一部濡れてしまい、修繕費として8万円ほどかかることに。
もし予備費がなければ、焦って無理に交渉して関係を悪くしていたかもしれません。
それだけではありません。
「価格交渉に応じてくれれば、引き渡し時期は合わせます」
そんな柔軟な姿勢を取れるのも、余裕があるからこそできることです。
逆に、余裕がないと一つひとつの交渉でピリピリしてしまい、結局買主にも不信感を与えてしまいます。
マンション売却は金額が大きい分、失敗すると損失も大きくなります。
だからこそ、最初から“備えておく”ことが最大の防御になります。
すべてを完璧にコントロールすることはできません。
でも、「困ったときに動ける準備」があれば、安心して一歩を踏み出せるのです。
まとめ
マンション売却は、一見すると単なる不動産取引のように見えるかもしれません。
しかし実際には、暮らしてきた時間や思い出、そして未来の住まいに向けた希望が詰まった、人生の大きな節目です。
「とにかく高く売れればいい」そんな気持ちが先行してしまうこともあるでしょう。
けれど、大切なのは“満足できる売却”ができるかどうかです。
私自身、初めての売却では「焦り」から判断を誤り、結果的に多くを失いました。
逆に、準備をしっかり整えて臨んだ2回目は、金額にもプロセスにも納得のいく経験となりました。
その差を分けたのは、「正しい情報」と「柔軟な対応力」だったのです。
成約までの平均日数を把握し、自分のペースで売却活動を進める。
相場を読み、現実的かつ根拠のある価格を導く。
諸費用やトラブルに備え、余裕を持った資金計画を立てる。
そして、信頼できる担当者と共に、一歩一歩進めていくこと。
これらを積み上げていけば、売却は“損をしないための作業”ではなく、“次のステージへの前向きな準備”へと変わっていきます。
売却という経験は、終わってみれば多くの学びと気づきを与えてくれるものです。
どんな選択をしても、「納得できる結果だった」と言えるように。
あなたの売却が、ただの取引ではなく、未来の生活を整える第一歩になることを願っています。