
はじめに
「中古マンションを買うのって、本当に大丈夫なのかな……?」
そんな声をよく耳にします。
私自身、初めてマンションを購入したとき、共用部の汚れや張り紙の劣化に気づき、胸の奥がざわついたのを覚えています。
物件の価格や間取りばかりに気を取られて、将来かかるお金や建物の管理状況について、まったく注意を払っていなかったんです。
でもあとで気づきました。
「積立金が少ない=得」ではないことに。
見た目はリフォームで美しく仕上げられていても、裏では修繕資金が足りず、エレベーターが止まったまま半年以上放置……なんて話もあるんです。
そのとき初めて「安さの裏側」に気づきました。
誰もが知っておくべき“数字の意味”が、目の前の快適さにかき消されていたんです。
この記事では、令和5年の政府統計をベースに、修繕積立金や管理体制、そして資産価値に直結する要素を深掘りします。
数字だけでは見えない、暮らしの実感を交えて解説します。
不安や疑問に寄り添いながら、読み手の「どう選べばいい?」という問いに丁寧に応えていきます。
読んだあとには「このマンションなら安心して暮らせる」と自信を持って選べるようになりますよ。
ぜひ、未来の安心のために、最後までお付き合いください。
修繕積立金平均1.3万円/戸月が資産価値維持の鍵
修繕積立金の基準値と現実的な平均額を知る
カタログのようにきれいに並べられた内装写真。
ぱっと見て心が踊るのも無理はありません。
けれど、その裏にある数字には、注意が必要なんです。
国土交通省が令和5年に実施した調査によれば、マンション1戸あたりの月額修繕積立金の全国平均は13,054円でした(出典:マンション総合調査 令和5年度)。
この数字は築年数や規模、設備内容などによって大きく変わります。
特に築20年を超える物件では、修繕が本格化する時期に差し掛かっており、積立金が平均額より低すぎると、その差額が住民にのしかかってくるリスクが高いのです。
私が以前見に行った築25年のマンションは、月額たった7,000円。
営業担当は「住民の合意で決まった数字なので問題ありません」と笑っていました。
でも……本当にそうでしょうか?
廊下の手すりにはサビ、集合ポストの扉はガタガタ。
ゴミ置き場の扉は壊れたままで、誰も修理しようとしない。
数字の裏に「手入れが足りない現実」が潜んでいると、体感してしまった瞬間でした。
「平均以下」という事実には、たいてい理由があります。
そしてその理由は、将来の出費や暮らしの質に直結します。
誰もが数字を軽視しがちですが、「今の暮らし」だけでなく、「10年後の状態」を見据えた視点を持つことが欠かせません。
たとえば専有面積70㎡なら月額2万円超が妥当
広さに応じて必要な金額も異なります。
修繕積立金のガイドラインでは、1㎡あたり月200〜335円が目安とされています(出典:横浜市 マンション管理ポータル)。
つまり、70㎡の住戸なら月額14,000〜23,450円程度。
この計算に、駐車場設備や機械式エレベーターなどの特殊要素が加わると、さらに費用はかさみます。
それ以下で済んでいる物件には、裏があるかもしれません。
「管理が効率化されていて…」なんて言われることもありますが、安さだけで飛びつくと、後で泣きを見ます。
私の知人はまさにその例で、築22年の低積立金物件を購入した3年後、大規模修繕費の一時金として60万円を請求されました。
「あの時、ちゃんと調べておけば……」と何度もこぼしていましたよ。
しかもその金額は、前触れもなく突然届いたもの。
貯金を切り崩すしかなく、旅行や車の買い替えをあきらめたそうです。
こんな思い、あなたにはしてほしくありません。
平均値とのズレをどう読み解くかが勝負
じゃあ、平均より安ければアウトなのか?
実はそう単純ではありません。
修繕積立金の額には、立地や設備、管理方式といった個別事情が反映されます。
たとえば機械式駐車場があれば、維持費として月額6,000円以上が上乗せされることもあります(出典:全国マンション管理組合連合会リンクス)。
また、高層階が多ければエレベーターのメンテナンス頻度も増加。
戸数が少ないマンションでは、1戸あたりの負担も大きくなります。
だからこそ、「なぜその金額なのか?」を管理会社や議事録から丁寧に読み解く必要があります。
数字を鵜呑みにせず、「根拠ある安さ」かどうかを探る視点が重要です。
そしてもうひとつ。
気になる物件が見つかったら、近隣の類似マンションとも比べてみてください。
意外と見えてくるんですよ、その“違和感”。
共用部の手入れ具合、掲示板の情報、郵便受けの整理整頓──
そういった細かなサインが、あなたにとっての“未来の暮らし”を暗示しているのです。
あなたなら、どこを最初にチェックしますか?
修繕積立金不足は36.6%に達する現実
国交省調査が示す積立不足の深刻さ
静まり返った掲示板の前で、私は立ち尽くしていました。
管理組合からの更新通知が半年以上掲示されていない——そんな状況に、何とも言えない不安が押し寄せてきたのを覚えています。
「もしかして、このマンション、うまく機能してないのでは……?」
国土交通省の『令和5年度マンション総合調査』によると、全国の分譲マンションの36.6%が、長期修繕計画に基づく積立額よりも実際の積立金が不足しているとされています(出典:マンション総合調査 令和5年度)。
つまり、3軒に1軒以上の物件が「必要な修繕費用を用意できていない」ということです。
私のような一居住者には、この数字の重みがじわじわと響いてきます。
部屋の壁紙はキレイ、キッチンも新しい。
でも、外壁のヒビや鉄製手すりの錆、エレベーターの異音——そういった「共用部の老朽化」は、管理不全や積立不足の兆候であることが少なくありません。
問題は、こうした状況が“じわじわ”と進行することにあります。
突如として「修繕のために一時金として60万円を納めてください」などという通知が届く頃には、もはや逃げ場がありません。
あなたは、そんな突然の負担に耐えられる準備がありますか?
たとえば不足率20%以上が11.7%も存在する理由
表面上は整ったマンションでも、帳簿の中では赤信号が灯っている。
こうしたケースが意外と多いのが実態です。
前述の国交省調査では、全体の11.7%が「20%以上積立不足」の状態とされており、その多くは築20年超の物件に集中しています。
つまり、修繕ラッシュが始まるタイミングで「お金が足りない」状態に直面する住民が少なくないのです。
私は一度、そうした物件を購入寸前で回避したことがあります。
内見時には分からなかったのですが、管理組合の議事録を見せてもらったところ、直近5年間で一度も積立金額の見直しがされていませんでした。
しかも「修繕内容に応じて都度検討する方針」とあり、将来的な費用見通しはまるで霧の中。
担当者が苦笑しながら「このマンションは住民の協力性が低くて…」と漏らしたその一言が、私の背中を押しました。
契約をやめて、本当によかったと今でも思っています。
一見「手間を省いた運営」は楽に見えるかもしれません。
でも、行きつく先は“ツケを回す未来”。
その負担が急にあなたに降りかかるかもしれないのです。
あなたなら、その帳簿の行間に何を見つけますか?
積立不足が生む3つのリスクと実例
積立金が足りないと、何が起きるのでしょうか?
リスクは主に次の3つです。
1つ目は「緊急時の一時金徴収」。
先ほど触れたように、必要な修繕が近づくと、突発的に数十万円単位の追加徴収が発生することがあります。
予告なく届く請求書。
私は実際に、知人がそれで家計を大きく崩した様子を見てきました。
2つ目は「修繕の先送り」。
外壁のヒビ、漏水リスク、エレベーターの不具合など、本来は計画的に対処すべき課題が放置されることで、建物全体の劣化が早まります。
そして3つ目。
「資産価値の低下」です。
共用部の荒れたマンションは、買い手からの印象が一気に悪くなります。
同じ立地・広さでも、売却価格で数百万円の差がつくことも珍しくありません。
現実には「外装が汚れているだけで内覧をキャンセルされた」という話も聞いたことがあります。
だからこそ、あなたには目に見えないリスクを見逃してほしくないのです。
どんなに内装が美しくても、それは“仮の顔”。
裏にある修繕計画、そして積立金の状態に目を向けてこそ、真の「安心な住まい選び」ができるのだと思います。
長期修繕計画5年ごとの見直し63%、運営健全化に不可欠
見直し実施率と計画放置のリスクを比較する
あなたは5年後、今と同じ住まいに安心して暮らしている自信がありますか?
それを支えてくれるのが「長期修繕計画」です。
国土交通省の『令和5年度マンション総合調査』では、長期修繕計画の見直しを「5年ごとに実施している」と回答した管理組合が63%に達したと報告されています(出典:マンション総合調査 令和5年度)。
一方で、「10年以上見直しをしていない」管理組合も約6.1%存在し、さらに「計画がそもそも存在しない」とする物件も全体の2.8%ありました。
これって、ちょっと怖くありませんか?
住まいの将来図を描くはずの地図が、白紙のままだということなんです。
私が過去に見学したある築30年のマンションも、まさにこのケースでした。
資料請求しても、提示された修繕計画は10年前のまま。
「変更ありません」と言われましたが、当時と比べて資材価格は大幅に上昇していたはずです。
そのズレをどう埋めるのか、誰も答えられない。
そんな不安だけが残りました。
たとえば築浅物件でも見直しは早期に必要
意外かもしれませんが、築10年未満のマンションでも修繕計画の見直しは不可欠です。
特に新築時の積立金は意図的に抑えられていることが多く、5〜7年目あたりから増額が必要になる場合が多くあります。
実際、国交省の調査でも築5年未満の物件において段階増額方式を採用している割合は67.8%と非常に高い傾向を示しています(出典:マンション総合調査 令和5年度)。
私も以前、新築から7年経ったマンションに住んでいましたが、いきなりの月額5,000円増額には正直驚きました。
管理組合から「資材費が2割上がっている」と説明されたとき、もっと早く見直していれば、こんなに急に負担が増えずに済んだのではと思いました。
築浅だからといって安心するのは早計なんです。
一歩踏み込んで、修繕計画の更新頻度や現実との乖離がないか確認することが、将来の負担を軽くするカギになります。
あなたは、その確認を怠っていませんか?
計画なき管理は、負担を“後送り”する危うさ
「将来、誰かがなんとかしてくれるだろう」
そんな空気が蔓延しているマンションほど、住民の負担が一気に跳ね上がる傾向があります。
なぜなら、長期修繕計画が不十分だと、必要な修繕費の見積もりが甘くなり、気づいたときには巨額の資金不足に陥っているケースが多いからです。
国交省の調査では、修繕積立金の“見直しをしていない理由”として「必要性を感じていない」が38.1%と最多でした。
ですが実際には、建築資材の価格や人件費は年々高騰しています。
たとえば、2021年から2024年の間に主要な建材価格は平均して15〜25%上昇しています(出典:一般社団法人 建設資材協会)。
このインフレを加味しない計画は、将来必ずひずみを生みます。
私が見てきた中で、修繕直前に慌てて見直した結果、1戸あたり月8,000円から13,000円へ一気に引き上げられたマンションもありました。
住民説明会では怒号が飛び交い、管理会社も板挟みに。
あの時の空気感は、今でも忘れられません。
「少しずつ積み立てておけば……」
何人もの方が、そう漏らしていました。
計画とは、未来の自分と家族を守る盾です。
後回しにすればするほど、その盾は薄く、そして脆くなる。
どうか、見直すことを“今”始めてください。
まとめ
見た目が整っていることと、安心して暮らせることは別物です。
中古マンションを購入する際、修繕積立金の金額や管理の状態を軽視してしまうと、未来の暮らしに思わぬ不安がつきまといます。
華やかなリフォームの裏に、積み残された課題が潜んでいることも珍しくありません。
この記事で紹介したように、修繕積立金の平均は1.3万円前後。
国のガイドラインでは㎡あたり200〜335円が妥当とされています。
また、全体の36.6%が積立不足で、11.7%は20%以上の不足という事実も見逃せません。
長期修繕計画の定期的な見直しや、管理組合の活動の透明性は、そのマンションの“運営力”そのものを示しています。
どんなにおしゃれな内装でも、管理不全のマンションでは安心感を得られません。
そして、見逃しがちなのが「将来の負担感」。
突然の一時金や大幅な積立金の増額は、家計を直撃します。
私自身、5,000円の増額通知に戸惑い、生活設計を見直すことになった経験があります。
だからこそ、購入前に「数字の根拠」と「管理の姿勢」を読み解く目が求められるのです。
数字と人の動き、その両方を確認することで、本当に安心できる住まいに出会える確率はぐっと高まります。
最終的に大切なのは、「今」だけではなく「これから先」も心地よく暮らせるかどうか。
未来の自分と家族のために、数字の裏側にあるストーリーに耳を澄ませてください。
あなたの選択が、10年後の暮らしを明るくする第一歩になりますように。